7月号 『合言葉は…お客様に最高のおもてなしを!』

【合言葉は…お客様に最高のおもてなしを!】

 

みなさんこんにちは。

いやー暑いですね。もう完全に夏ですね。東京の梅雨はどこにいってしまったんですかね?

逆に九州地方では大雨が続いたり、、、

自分も実家が九州なので、たくさんのお見舞いのご連絡を頂きました。

ありがとうございます。

そんな今回の月刊ゴツプロ!は、なんと九州に向かう飛行機の中で書いています。

たまたまなのですが、この時期に九州で仕事がありまして…

 

今回のテーマは…

2017年秋に幻冬舎さんから小説の出版が決まった、ゴツプロ!旗揚げ公演「最高のおもてなし!」について書いていこうと思います。

 

どうやってあの作品が生まれたのか?

稽古で大変だったこと?

みなさんの知らない裏側を少しでも伝えられたらと思います。

 

まず…ゴツプロ!には文芸部ってのがありましてね、ま、メンバーは作家の竹田新と俳優部の浜谷康幸なんですが、台本執筆に当たって二人で話しながらってことはよくあることで。

もちろんみんなが集まった時に案出ししたり、意見を言ったりなんてことはあるのですが…

最高のおもてなし!も、まずはこの二人の案出しから始まったのです。

しかし、考えてみてください。

僕たちゴツプロ!は男性だけ8人。しかもおっさんだけ(笑)

これだけでかなり縛られるわけなんです(汗)

やれることが限られる。

ヒロインを登場させることも、隣の気さくなおばさんを出すことも、彼女、嫁を登場させることもできないわけですから。

そんな中、みんなで話していて、男だけしかできない仕事ってなんだろう?とか、

男性だけしか登場しないシュチエーションって何がある?

みたいな話をたくさんしまして、たくさんの意見も出た中で、船乗りは?ってことになり、

なんか全員がピンときたんですよ。

 

『船乗りいい!!かっこいい!!』

 

ここが、最高のおもてなし!のはじまりでした。

 

この船乗りに骨ができて、そこに肉が付いて、我々の手元に台本が届いたのが、稽古開始の少し前。

 

一般的に小劇場の稽古って稽古始まっても台本が上がってないこともザラなんです。

でも、作家、竹田新は必ず稽古開始までに上げてくれます。(今後も期待してます(笑))

これって本当に有難い!!

 

メールでそれぞれに一文を添えて送ってくれるんです。

それが嬉しいんですよ。

なんか活字に命が宿る感じがするんです。

自分も台本を執筆するので、産みの苦しみは痛いほどわかります。

海さんといつも話すんだけど、台本の最後の一文字を打ってEnterをパーンって押すときは快感だよね!って。

そんな台本を、一人ずつ丁寧に言葉を添えて送ってくれる。

 

例えば…

『今回の役はこういう想いで書きました。こういう◯◯な一面を見れるのを楽しみにします。』

とかとか。

あくまで例ですけど、こんな感じで想いを添えてくれます。

 

自分は『最高のおもてなし!』が竹田新作品のお初でしたから、この一文をもらうのも初めてで、とても感激したのを覚えてます。

 

そして、いざ初見。

一言で言うと、ぶるっときました。

ゾワゾワと鳥肌が立ったんです。

 

竹田新作品はこれまでにも『ふくふくや』で何本も見てきました。

その竹田節といいますか、泣きながら笑い、笑いながら泣く。

そんな竹田新ワールド全開な中、今までにない新しさを感じました。

 

これは面白い!!

これはいけるぞ!!

 

おそらくメンバー全員がそう感じたと思います。

 

そして、稽古初日の読み合わせ。

それぞれの色がごちゃ混ぜになる日。

いやー、面白かった。

すっと世界の中に入っていく感じがしました。

 

本番でみなさんにお見せするまで、何度も何度も稽古を重ね、飲みを重ね(笑)

あーでもない、こーでもない、と繰り返し。

それぞれのキャラを濃くしていき。(中でも衣田役の渡邊聡さんが一番濃くなったかも(笑))

繰り返し繰り返しの稽古を重ねるわけです。

 

そして、まず壁に当たったのが、時空の問題。

これってSF映画などでもいつも問題になるところですよね。

仮にここに誰がいたら、数十年後、そこに誰がいるのはおかしい。とか、

ここでこれが起こっていたら、未来は変わってないといけない!とか、

こんなのがとめどなく出てくるわけですよ。

僕ら役者って、実はそう言う細かいところが一番核になったりするんです。

役作りをする上で、小さなディティールから拾っていく。

ですから、みんなで話し合って、一つの答え(共通認識を持つ)を出したり、また別の角度からそれぞれの視点でそれぞれの答えを作ったり。

稽古中、こう言う作業を何度も繰り返しました。

これがタイムスリップものの一番の難しさだと思います。

 

続いて難しかったのが、これまたやはり『時間』。

公演を見られた方はわかると思いますが、『最高のおもてなし!』の一つの醍醐味は、リアルタイムで物語が進んで行くところ。

大きな古時計が舞台上に設置されていて、その時計に合わせて進んでゆく。

ご覧頂いた方によく、「どうやって時計を合わせてるんですか?」などなど、質問を受けたのですが、あれはなんの細工もなく、時計に合わせて芝居を進めてました。

台本では、ある程度の時間が記載されていて、稽古を重ねるうちにだんだんと時間も安定してくるので、台本上の時間を実際の時間に書き換えました。

そして、そのあとはひたすら稽古。

 

魚雷で攻撃される決まった時間、その時間までどう緊迫感を持って作っていくか?!

これが最大の鍵でした。

だって、見てるお客様もその時間を気にして、「ああ、もうすぐその時間だわ。」「この時間になったらどうなるんだろ?」って、期待してるところに、時間を過ぎても何も起こらない!時間前なのに、起こってしまった!じゃ、納得できないですもんね。

なんで、この時間だけはホントシビアに取り組みました。

 

台本の途中途中に時間が出てくるんですが、そこは本当に時計の時間をセリフとして吐いて、「今日は1分早いからちょっと落ち着いて芝居しよう。」とか、逆に遅いから巻いて行こうとか!

みんなで探りながら、合わせながらの稽古。

おそらく、これまでの舞台の中で一番通し稽古をしたんじゃないかな。

 

とは言え、万が一!も、あるわけで…

ですから、その時用に、早くいっちゃった場合の追加セリフ、遅くなった時の切りセリフも用意したんです。

何重にも用意に用意を重ねた本番は、なんと一度も狂うことなく時間通りに終わったのです!!!

 

ですから、公演時間は毎回ほぼ同じタイムだったと思います。

こんな舞台も珍しいのでは!?

 

通し稽古を数多くこなしたことが僕たちの自信に繋がりました。

 

そして最後の問題が、これまた時間に纏わることなんですが…

 

大きな振り子の時計!!

 

時計をモチーフにしてましたから、時計を動かすシーンもありまして、結構な存在感なんです。

でも、なんせ振り子時計って繊細で、動かした時に振り子の動きが変わったり、当たったりすると、

すぐに止まったり狂ったりするんです。

これには正直参りました。

公演中、何度か時計屋さんに出張してもらって調整してもらい…

あとは神頼み!!!

でも、これまた願いが通じたのか!?公演中一度も狂うことなく終わったのです。

 

いろんな見えない力、見える力に助けられて乗り切った旗揚げ公演は忘れることのできない最高の一本になりました!!

 

余談ですが、ネットで調べた時計屋さん。

なんと主宰の塚原大助の高校の先輩だったのです。偶然か、必然か…

 

時計屋さんが大助の先輩じゃなかったら、

時計屋さんが出張してくれなかったら、

高級置き時計を貸してもらえなかったら、

僕たちがまさかの稽古嫌いだったら、

 

『最高のおもてなし!』はリアルタイムな物語じゃなかったかも知れない?!

 

お後がよろしいようで…

 

稽古中の面白話しはまたいつか。

 

あー早く小説も読みてーな!!

 

つづく…

泉 知束Tomochica Izumi

1994年より、日活芸術学院俳優科で演技を学ぶ。
1996年、劇団「麦」公演で役者デビュー。
2000年、演劇ユニット「Team Chica」を旗揚げし、主宰・作・演出・主演を務めている。
また、2005年樽沢監督作品「月桂哀歌」で映画脚本を手掛け、俳優業だけに留まらず、
マルチな才能を発揮している。
月刊ゴツプロ!の執筆を行なっている。

泉 知束Tomochica Izumi

1994年より、日活芸術学院俳優科で演技を学ぶ。
1996年、劇団「麦」公演で役者デビュー。
2000年、演劇ユニット「Team Chica」を旗揚げし、主宰・作・演出・主演を務めている。
また、2005年樽沢監督作品「月桂哀歌」で映画脚本を手掛け、俳優業だけに留まらず、マルチな才能を発揮している。
月刊ゴツプロ!の執筆を行なっている。