イントロダクション
まだ焼け跡も片付かない戦後、昭和23年。作家・塚口圭吾とその妻・やす代が暮らす東京近郊の家には、今日も原稿待ちの編集者たちが詰めかける。
最後の無頼派ともてはやされる流行作家だった圭吾は、その重圧から神経過敏となり、酒と薬物で心身のバランスを保っているようなものだった。ことあるごとに二階から飛び降りるのも、薬物で高揚した精神のなせるわざ。
「原稿を走る筆の音が、まるで身を削る刃物の響きに聞こえて」
そんな圭吾に寄り添ってきたやす代にとある変化が訪れたことで、夫婦の時間が変わっていく。
混沌の時代を懸命に生きながら、どこか滑稽で愛おしい人々。日本を代表する作家・坂口安吾とその妻・三千代をモデルに、一癖も二癖もある登場人物たちそれぞれの愛の形を描き出す、中島淳彦の代表作。
演出 青山勝(劇団道学先生)コメント
「無頼の女房」は中島淳彦の代表作で、これまでいろいろな劇団で上演されてきました。初演はぼくが主宰する劇団道学先生で、無頼派作家の塚口圭吾もぼくが演じています。
当時中島には多くの執筆依頼が来ていて、毎年のように年間五~六本の書き下ろしを続けていました。締め切りなどはあってないようなもので、稽古初めには最初の数ページしかなかったように覚えています。台本が届くそばからセリフを覚えて立ち稽古の連続で、じっくり読み込む余裕などはありませんでした。
今回、ゴツプロ!の塚原さんから演出の依頼を受けあらためて脚本と向かい合ってみました。ほぼ二十年ぶりです。
中島は四十代になったばかりでした。作品のそこここに、人生でもっとも忙しかった時期の劇作家の熱のほとばしりを感じて、身体の中のどこかに火がついたような気分になりました。まだ稽古に入る前からはやる気持ちを押さえかねています。
血の汗を流しながら書き続けた友人の脚本です。最高の芝居にしなければ、と我が身に言い聞かせ、稽古入りを待っています。
プロデューサー 塚原大助(ゴツプロ!主宰)コメント
中島淳彦さんの作品でゴツプロ!メンバーのほとんどが共演し出会い今があります。
そんなご縁を頂いた中島さんの作品を今、ゴツプロ!で劇団道学先生の青山勝氏を演出に迎え上演できることに喜びを感じております。
青山さんにも本当に沢山のことを教えて頂きました。良いじゃないかだらしがなくて、良いじゃないかずる賢くて、良いじゃないか滑稽で、今を一生懸命に生きる大人たちが愛おしい。
多くの若者たちにも是非観に来て頂きたい、こんな温かくて優しい世界を。
ワクワクする役者とスタッフが集まってくれました。この『無頼の女房』がまたゴツプロ!の新たな一歩になると確信しています。
ゴツプロ!第九回公演『無頼の女房』
●作:中島淳彦
●演出:青山勝(劇団道学先生)
●出演:塚原大助 浜谷康幸 佐藤正和 泉知束 渡邊聡 44北川
/かんのひとみ(劇団道学先生) 浅野令子 土屋佑壱 鹿野真央(文学座) 前田隆成
/剣持直明(劇団だるま座) 久保酎吉
●東京公演
【日程】2024年6月6日(木)〜 6月16日(日)
【会場】本多劇場(東京都世田谷区北沢二丁目10-15)